2001年の子どもが危ない -2-

●(25)子どもを凶暴にする食事

 校内暴力やいじめなど、子どもの異常な行動心理も、父兄や教師が頭を悩ませている問題です。日本では、両親の甘やかし過ぎ、学校教育のシステムの不備、受験戦争の産んだ犠牲者といった視点からしか論じられていませんが、欧米では子どもの食事との密接な関連が以前から指摘されていました。
 この分野で、1980年代に最も注目すべき研究を行ったのは、カリフォルニア州大学スタニスラウス校の社会学者、ステファン・ショーエントーラー博士です。彼の行った一連の実験は、少年犯罪への認識を根底からくつがえしたともいえます。順を追ってみてみることにしましょう。

 最初の実験では、バージニア州の少年院に収容されている約300人の少年たちの食事が栄養価の高いものに変えられました。修正の内容はシンプルです。炭酸飲料類の替わりにフレッシュ・フルーツのジュースを与え、砂糖や添加物をふんだんにつかったデザートやスナックは、果物、生野菜、チーズ、ナッツに置き換えるというものでした。

 たったこれだけで、他の少年とけんかをする、脅迫する、看守に服従しない、自殺しようとするなど、少年院内でのトラブル発生回数は48%も減少しました。
 予想以上の結果に力を得たショーエントーラーは、カリフォルニア州やワシントンDCなど、12ヵ所の少年院の8,000人の少年たちを対象にして、同じような食事修正の実験を行いました。その結果、トラブル件数はやはり47%減少したのです。

 「その次に私が知リたかったのは、少年たちの行動心理を変えたのは、食事の中の何だったのか、ということです」とショーエントーラーは語っています。「砂糖や添加物を除いたのがよかったのか。少年たちの食事に重要な栄養素が欠けていたのか。これを突きとめるために、5つの州の少年院で、約300人の少年たちの食事を綿密に分析しました」

 ここでも興味深いデータが得られました。最も悪質で、凶暴な少年たちの食事には、共通して不足している栄養素が9種類あったのです。ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、 葉酸、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄の9つ。この内、5種類の栄養素を不足させている少年は、例外なく札付きの暴れ者でした。新鮮な野菜、果物、精製されていない穀物など、食事修正の実験で出された食べものは、まさにこうした栄養素を供給していたわけです。
 ショーエントーラーはさらに、食事の内容は変えず、この9種類の栄養素を錠剤で与えたらどうだろうと考えました。

 効果はありました。3カ所の少年院で、56人の少年たちに3ヵ月間ビタミン剤を与えたところ、もめ事をおこす回数が約40%も減ったのです。この実験を始める前には2ヵ月間で26回も事件を起こしていたトラブルメーカーが、ビタミンをとり始めてから一度も問題を起こさなかったという例もありました。ただし、ビタミン剤だけでは、変化の見られない少年も多かったことから、ビタミンの補給と同時に、脂肪や砂糖、添加物を減らした方が、より効果的なようです。

【禁無断転載】

丸元淑生著
 『2001年の子どもが危ない シリーズ(1) −栄養編−
  第2章 子どもの心と体は、食事でこんなに変わる』
より抜粋

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