2001年の子どもが危ない -1-

●(24)ランチを変えただけで、学カテストの成績が16点も増えた

 ニューヨーク市学区の中には、校内のカフェテリアが1,200以上あり、平日は毎日約100万人の子どもたちがそこで朝食とランチをとっています。学区として1年間に購入する食品の総額は約1億ドル。米国全体で見ても、2番目に大口の食品購入者です(1番は米国陸軍)。

 そのニューヨーク市学区が、1979年から注文する食品をガラリと変え始めました。学区の責任者が、カフェテリアで出している食事がヘルシーな内容とはいえないのではないか、それを改善すれば子どもたちの成績や生活態度にもよい影響が出るのではないかと考えたためです。これは、子どもの食事と学習能力の関連についての、世界で最も規模の大きい調査となり、その結果のインパクトもまたギネス級でした。

 それまでのカフェテリアの定番といえば、チョコレート・ミルク、フルーツ・ポンチ、コーラ、ハンバーガー、フレンチフライ、ホットドッグなど。自動販売機もあるので、チョコレート・バーやボテトチッブといったジャンクフードも食べ放題です。米国のハイスクールのカフェテリアで出される食事は、ファーストフードのチェーンに任されていることが多く、動物性脂肪や砂糖の量は相当高くなっています。日本の学校給食と比べても、相当お粗末な内容です。

 それを4年間にわたって段階的に修正していったのですが、まず、1年目には、飽和脂肪と砂糖が減らされました。ハンバーガーに使う肉も脂肪をカットし、パンは食物繊維の豊富な茶色のものに変えられ、食品に含まれる砂糖の割合は11%がリミットとされました。それまで、ケチャップには29%、アイスクリームには20%、コーンフレークなどのシリアル類には50%も砂糖を含むものがあったのですが、まとめてカフェテリアから追い出されました。
 2年目には、合成の着色料や甘味料を使った食品が完全にシャットアウトされました。3年目は変化なし。4年目には、合成の保存料(BHAやBHTなど)が除かれました。
 この結果は劇的でした。

 まず、修正を始めた年ですが、標準学カテストの平均点は、100点満点で39点でした(カリフォルニア・アチーブメント・テストという全米の標準的な試験)。ニューヨーク学区でこの標準テストが実施されて以来最低の成績で、全米の55,000学区の平均と比べて11点も低いという惨たんたるものでした。もともと、成績がこれほどひどかったからこそ、学区の責任者も子どもたちの食事を見直す気になったのです。

 学カテストの学区平均というのは、急に上がり下がりしないのが普通です。ニューヨーク市学区の関係者も、何年かして、2、3点上がれば上出来くらいに考えていました。ところが、食事を変えた1年目から、いきなり平均点が8点も増え、47点まで上昇したのです。これは、ニューヨーク州だけでなく、全米のすべての学区を含めてもレコードを書き換える年間アップ率となりました。
 合成着色料などをはずした2年目には、平均点がさらに51点まで上がりました。食事を換えなかった3年目には、面白いことに得点の平均も変化なし。そして、4年目には再びアップして55点に達したのです。
 この調査結果をレポートしたアレキサンダー・シュラスは次のように語っています。

 「この4年間に、ニューヨーク市学区は教師の給料を上げたわけでもなく、教師一人あたりの学童数を減らしたわけでも、カリキュラムを変えたわけでもありません。変わったのは、ただ食事だけです。信じ難いことですが、食事のパワーだけで、学力試験のスコアを16点も押し上げたといわざるをえません。
 それを裏付けるデータもあります。実験前は、カフェテリアでよく食事をする子どもの方が成績が悪かったのですが、実験後は逆転しました。今では、カフェテリアで一番たくさん食べる子どもがトップグループになり、弁当をもってきている子どもより平均で11点もスコアが高いのです」

 彼らが、脂肪、砂糖、合成の着色料、甘味料、保存料をカフェテリアから除いたのには、理由がありました。こうした成分が、子どもの能力を十分に引き出す妨げになるというデータが、すでに蓄積されていたのです。それについては、後ほど触れることにしましょう。

【禁無断転載】

丸元淑生著
 『2001年の子どもが危ない シリーズ(1) −栄養編−
  第2章 子どもの心と体は、食事でこんなに変わる』
より抜粋

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