間違いだらけの酒常識 -9-

間違いだらけの酒常識

間違いだらけの酒常識

第九話 度数の高さが日本酒の欠点?

■度数増します、われらが酒よ
 残念ながら現在の日本酒は、低迷の一途をたどっています。そこで、なぜ今のように落ち込んでしまったのかという現状の分析がなされ、いくつかの要因が挙げられてきました。その中で、「アルコール度数が高い」ことも、日本酒の敬遠される要因として指摘されるようになっています。
 発酵中の日本酒は、醸造酒としては世界最高レベルのアルコール度数に達します。強力な糖化力を持つ麹を使うことと、並行複発酵(へいこうふくはっこう=麹による糖化と酵母によるアルコール発酵が、同じ容器内で、同時に進行する)という、世界でもまれな発酵形式のために、日本酒はアルコール度数を高くすることができるのです。
 特級、一級、二級といった級別制度があった頃は、市販酒のアルコール度数の基準は15度台でした。割水(わりみず=加水して度数調整すること)していない酒(原酒)は、純米酒で17〜19度くらいのアルコール分です。それを15度台まで割水して商品化するのが普通だったのです。
 ところが最近の日本酒では、14度台は珍しくありません(特に生酒に多い)し、ワイン並みに12、13度台まで落とした商品も増えています。

■度数の高さの何が問題か
 度数の高さを問題視するのは、

  • 度数の高さが、飲みにくさにつながる
  • 度数が高いと、身体にこたえる
  • 度数が高いから、たくさん飲めない

    といった点を気にするからだと思われます。
     でも、本当にそうなのでしょうか?
     飲みにくさについては、以前にもお話しましたけれど、完全発酵していない、熟成が足らないなど、酒自体の問題のほうが原因としては大きいと思います。真っ当に仕上がった酒をきちんと熟成させていれば、度数の高さは、思ったほど気にならないものです。
     また、薄くすれば飲みやすいかと言えば、それも違います。特に食べながら飲むのなら、薄さを感じるような酒では料理に合わず、逆に疲れてしまいます。
     身体にこたえるというのも同じです。余分な雑味がなく、まろやかに熟成した酒は、身体にもしっくり馴染みます。それでも心配な方は、しっかり食べながら飲む、汁物や水、お茶などを摂りながら飲む、といったことを心掛けていただければよろしいかと存じます。
     たくさん飲めないことに対しては、ガブガブたくさん飲もうとするからだ(笑)と言っておきましょう。わざわざ薄めてまでたくさん飲もうとしなくても、料理とともに自分のリズムで酒を楽しめれば、それで充分ではないでしょうか。

    ■(お)薄いのがお好き?
     私とて、度数の高い原酒こそが最高だと考えているわけではありません。ただ、闇雲に度数の高さを悪者にする風潮には「ちょっと待った!」と異を唱えたくなるのです。
     私が酒のソフト(低アルコール)化を危惧するのには、低アルコールで旨い酒を飲んだためしがないということが根底にあります。度数を下げても“飲める”酒には、何度かお目(口?)にかかったことがあります。しかし、低アルコールにして、より美味しくなったという酒には、まだ巡り合ったことがありません。
     現在の酒と昔の酒を比べると、同じ度数でも味の濃さが違います。今の酒は、随分味が薄くなってきているのです。その薄い酒をもっと薄めるのですから、旨さや飲み応えなども薄れて当然ではないかと思います。
     今まで操り返し書いてきましたが、酒は、飲んで旨いかどうかがすべてです。薄めることで旨くなるのなら、どんどんやるべきでしょう。でも、あまり度数を下げると旨さも薄まるというのが通例のようです。私の個人的な感覚では、15度を切ると薄さを感じ始めます。昔、15度を基準にしていたのも、たまたまかもしれませんが、理にかなっていたのではないかと考えています。
     度数が高ければ、それにあった飲み方をすればいいだけの話です。また、酔うのが嫌だという人もおられますが、日本酒に限らず、飲めば酔うのが酒です。
     ですから、みなさんには、度数が高いかどうかよりも、身体に馴染むか、料理に合うか、そして何と言っても、旨いと感じるかどうかを、酒と付き合う基準にしていただければと存じます。
     その上で、自分のペースと適量に合わせて、旨し酒の酔い心地をどうぞお楽しみください。

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