間違いだらけの酒常識 -1-

間違いだらけの酒常識

間違いだらけの酒常識

第一話 色の濃い酒は、品質も悪い?

■お酒も色々〜♪
 竹鶴の酒の色が濃いのは、自他ともに認めるところです。当社の製品について最もお問い合わせが多いのも、お酒の「色」についてです。
 まずみなさんにご理解いただきたいのは、程度の差こそあれ、自然に造った酒には色があるということです。
 ビール、ワイン、ウイスキーなど、他の酒類のほとんどには、色があることが当然とされています。でも日本酒においては、なぜか無色透明が尊ばれています。
 酒はお米を原料とし、麹や酛という、多彩な微生物たちに働いてもらう工程を経て生まれます。こうしてお米の複雑な味わいを溶かし込んだ酒が、どうして無色透明に見えなければならないのか、理解に苦しみます。
 酒蔵でご覧いただければ一目瞭然なのですが、発酵中の醪には色があります。したがって、搾った酒には新酒の時点から色があります。それが自然です。また、火入れ(加熱殺菌)や熟成によっても色は濃くなっていきます。それも自然なことです。

 実は、酒を“白く”(脱色)するのは簡単です。「活性炭素(冷蔵庫や靴の脱臭剤などにも使われています)」というものを使って濾過をすれば、どんな酒でも “水のような”見た目に変えることができます。ところが、活性炭素は色だけでなく、味や香りも取ってしまうので、脱色した酒は、結果的に没個性でバランスが悪く、味わいも不自然な酒になりがちなのです。

■色の白いは七難隠す
 ではなぜ、酒に色があることが嫌われるようになったのでしょう?
 その昔、粗悪な酒が横行した時代がありました。それらの酒の色が濃かったため、「色=劣化のバロメータ」という図式が酒業界内に浸透していったようです。
 そこで、酒の審査や品評会などにおいて「色」は悪者扱いされ、市販酒でも活性炭素で脱色することが普通になりました。脱色などの加工を、酒業界内で「化粧」と肯定的に呼ぶようになったのも、
そのためです。まさに“色の白いは七難隠す”ですね。

 そんな背景があり、活性炭素濾過をしない酒のほうが珍しくなり、世間一般でも、「色がある酒=問題のある酒」ということが《常識》になってしまったというわけです。

■目でも愛して
 竹鶴酒造では、酒本来の風味と熟成を重視し、酒らしい酒を追求し続けています。そうした姿勢から、いくら濃くなろうとも、それが自然な色だとの誇りと愛着を抱いております。“化粧”のすべてを否定するわけではありませんが、私どもは、酒を“素顔のままで”お届けし、味わっていただきたいと考えています。ですから竹鶴酒造では、どの酒にも活性炭素は一切使用しておりません。つまり、色があるままの商品化は、明確な意図があってのことなのです。
 ところで、酒の劣化と結びついた着色の原因としてよく知られているのは、鉄分の混入です。竹鶴酒造の仕込水は鉄分がほぼゼロです(0.01ppm以下)。また、鉄分混入防止のため、配管のステンレス化やホーロータンクの傷の補修も可能な限りやっております。
 ただし、仕込水の性質から、麹の酵素がよく効き、色が出やすいという特徴があります。それに、竹鶴の方針として、麹をしっかり造り、ある程度米も溶かして旨味を出す、ということがありますが、これも色が濃くなりやすい造り方だと言えます。他蔵の無濾過の酒などと比べても色が濃いのは、そういったことに由来します。ですから竹鶴の酒の色は、何らかの原因による「着色」ではなく、それが「地の色」、つまり個性なのです。
 酒の色にマイナスのイメージがあるのは承知しておりますし、ただ色が濃ければよいと考えているわけでもないのですが、だからといって私どもは、脱色しようなどとは毛頭考えておりません。脱色は、自然の恵み、授かりものであるはずの酒に人為的な加工を施すことですし、脱色することで酒の味わいが深まるとは思えない、要するに、脱色することがお客様のためにならないと思うからです。それよりも、酒の色への偏見を払拭したいとの使命感を抱いて、これからも自然な色の酒を造り続けていく覚悟でおります。
 みなさんには、竹鶴の酒に限らず、酒に色があるというだけで“飲まず嫌い”にならないでいただきたいと思います。「美味しそうな色だ」などと、目でもお酒を味わってくだされば幸いです。

この記事の著作権は竹鶴酒造株式会社が保有しています
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